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mireaマガジン連載企画

思いあるヒト。

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意思ある人が創る、カタチあるモノ。

2010.07.20更新

横浜市中区土橋印房の印章

印章とは判子本体のことを言い、印鑑は印章を押したあとの印影を指す。
さて、その手彫りの印章を一度じっくり見て欲しい。蜘蛛の糸のように繊細な部位に驚くことだろう。
これが手仕事のなせる技だ。人生の中で、何度か印章を購入する機会があるのならば、ぜひ職人の手技が光る逸品を手に入れたい。

祖父の代から続き、約120年目を迎える「土橋印房」。

現在、三代目の店主、土橋 稔さんと息子さんが営んでいる。

ガラガラと引き戸を開けると、ラジオから都はるみの歌声が流れてきた。店の片隅で寝ていた犬がこちらを見上げる。

ホッとしたのも束の間、飴色のツヤを放つ使い込まれた商売道具に身が引き締まる。

作業台の上でひときわ存在感があり、束になって並んでいる鋭い刀を印刀といい、これで文字を彫る。土橋さんが修行時代から使ってきた物だ。かれこれ60年になるという。よほど丁寧に毎日磨いてきたのかと問うと、「何でも、過ぎたるは及ばざるが如しなんですよ。ほどほどの塩梅、わかりますかねぇ」。

ドキリとする物言いなのに、穏やかな空気が流れる。職人が持つ自信と、膨大な経験からくる器の大きさのせいだろう。朱肉をつける時や押印をする時は、心を落ち着かせ、丁寧に扱うことだと言う。こちらは生徒のような心持ちになり、真剣にうなづく。

「唯一無二の物を私たちは作っているんですよ。時代に逆らっているのか、取り残されたのか、わからんですけどね。でもね、人様の大事な印章を作らせていただいている、これは有難いことです。明日も明後日も、ずっとこうして黙々と続けていきますよ」。

History

神奈川県生まれ。昭和29年、印章彫刻業に入る。印章彫刻技能に卓越し、特に木口彫刻における「篆書体」に深い見識を持つ。全国唯一訓練校にて後進の指導育成に尽力した経験を持つ。優秀技能者県知事表彰、卓越技能者県知事表彰など。 全技連マイスター神奈川現会長

土橋印房
中区住吉町5-56 
営:9:00~19:00 休:日、祝、年末年始

心に残る夏の思い出
市電が走っていた頃のことですよ。上階に住んでいた喫茶店のマスターと、お互い仕事が終わると家の前で「縁台将棋」をするのが日課でしたね。「やりますか」「やりましょう」と。道行く人も、どれどれという風情で覗いていきましたよ。

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  • 神奈川の名工展に出品した作品「平家物語(序)」は、平家物語の冒頭文を彫ったもの。繋げて押印すると巻き手紙のように。クリエイティブな発想にこちらも刺激を受ける。
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  • 別名を坊主とよぶ「棒台」の丸い台の上で作業をおこなう。粋な手ぬぐいが巻かれているのがわかるだろうか。
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  • 中学を卒業後、修業を始めてからずっと愛用している印刀。研磨用と仕上用があり、仕上用は恐ろしいくらいスパッと切れる。
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